2021/09/18 16:04

COLONY CLOTHINGにまつわる魅力あふれる人たちを紹介する新連載。

第1回は、南米コスタリカより、Kai Elmer Sottoさん。(前編)

グローバルなエレガンスを知り、確固たる自身のスタイルをもっている彼に、

COLONY CLOTHINGの魅力を語ってもらった。

原稿/藤田雄宏 写真 /Kai Elmer Sotto

ディレクターの河村浩三氏さん(左)と、カイ・エルマー・ソットさん(右)。ふたりの友人の店、ローマのChez Dedeにて。


まず最初に、河村浩三さんについて

COLONY CLOTHINGのディレクターである河村浩三さんは自分と同じ1975年の生まれで、誕生日は浩三さんがクリスマスで僕がイブ。僅か1日違いということもあり、お互いに妙な親近感をもっているものと勝手に思っている。

ご存知の方も多いと思うが、浩三さんはCOLONY CLOTHINGをスタートさせる以前、ビームスで15年以上のキャリアを積んできた。ジョージ クレバリーやファーラン&ハーヴィーといった英国のビスポーク、チャーサレ アットリーニやアンナ マトゥオッツォといったイタリアンクラシックをど真ん中で経験しながらモードやストリートやヴィンテージに明るく、世代的にアメカジも通ってきている。

ビームスという最高の舞台でファッション業界のメインストリームを歩んできたからこそ形成された浩三さんのツイストしたスタイルは、同い年の友人の中でも頭ひとつ抜きんでてユニークである。

そんな浩三さんがシンガポールにセレクトショップ "COLONY CLOTHING" をオープンさせると聞いたとき、僕は期待に胸を膨らませた。彼はひとつのスタイルに固執せず、面白いと思ったものは自分の感覚を信じて積極的に取り入れていくタイプなので、今までの積み重ねと新しいアイデアをどのようにクロスオーバーさせて店を作るのか、そこにワクワクさせられたのだ。

僕がシンガポールのCOLONY CLOTHINGを初めて訪れたのは、ショップがオープンした翌2015年のことだ。都市とリゾートが共存するシンガポールという地に根差したセレクトをしていて、そのふたつが交錯して生まれるエネルギーをモロに感じたのを覚えている。

2018年には浩三さんの大々的な協力のもと、『THE RAKE』でシンガポール特集も組んだこの頃には確実にシンガポールのリーディングショップになっていて、彼らが提案する、シンガポール在住者にリアルに求められている“JET SET (ジェットセット)”と“LUXURY RESORT (ラグジュアリーリゾート)”というスタイルは、非常に高い支持を得ていることが身に沁みてわかった。

サーフボードがあってTシャツやスイムウエアがあって、その隣にナポリ製スーツがあって、そんなところでサヴィル・ロウの名門中の名門ハンツマンが来店してトランクショーをやっていたり、ジョージ クレバリーのビスポーク受注会をやっていて、加えてオールデンの靴をいつでもオーダーできる店なんて、最高すぎません?そんな店、世界中を見渡してもCOLONY CLOTHINGだけである。でも、それがシンガポールではリアルであるのだ。


「自分が知るファッションにアジアの空気をミックスさせ、日本人の感性で表現できたら面白いことになるのではないか、その舞台は多民族国家で世界中から投資家が集まるメルティングポットのシンガポールだろうな、そんな思いがあって、この店を始めたんです」と河村氏。

 予感は的中した。ジェットセットとラグジュアリーリゾートを打ち出している同店の客のほとんどは、世界中を飛び回るエグゼクティブたちだ。もちろん、国籍はバラバラである。


当時の僕はTHE RAKE 2018年 Issue22)でこのように書いている。COLONY CLOTHINGは本当にシンガポールに住むさまざまな国籍の人たちから愛されていて、いつの間にかそんな彼らの憩いの場になっており、それが店の活気となって、それはひとつのムーブメントとなって、シンガポール発のシーンを形成している。

今回ご紹介するカイ・エルマー・ソット(Kai Elmer Sottoさんも、COLONY CLOTHINGを心から愛するひとりだ。FACEBOOKINSTAGRAMの初期メンバーとして世界的企業への急成長に大きく貢献した彼は、自身のビジネスも成功させ、仕事と遊びで常に世界中を飛び回ってきた。

COLONY CLOTHINGのテーマである“JET SET & LUXURY RESORT”を、最も体現している人物といっていいだろう。

カイさんとは自分も2105年に知り合ったが、彼はグローバルなエレガンスを身に着けており、とてもチャーミングで、人を惹きつける魅力に満ちたジェントルマンだ。

今回、コロニー クロージングにまつわる人たちを紹介していく「Style with COLONY CLOTHING」という連載をスタートするにあたって、第1回のゲストとしてカイさんは最高の人選なんじゃないかな。

浩三さんと、カイ・エルマー・ソットさん(右)


-------------------------------------------------------------------------------------------------------

Vol.1 Kai Elmer Sotto

訪れる国に合わせて自分のスタイルを楽しむ

真のグローバルエレガンス

Photo by Peter Beavis


仕事と遊び、どちらをしているのかわからないのが理想

カイ・エルマー・ソットさんは1970年に生まれた。フィリピンで生まれ育ったが、両親はともに中国出身だという。

16歳のときにバスケットボールをするために単身でアメリカのミシガンに渡った。その後、17歳で4人の弟たちとカナダに移ったのだが、旅が大好きだったカイさんは、当時から国際的な視野をもって、仕事やプライベートで世界中を旅している自分の未来を常に想像していたという。

トロント大学では経済と英語を学んだ。4人の弟たちを養うために、郵便局やガソリンスタンドでのアルバイトで忙しい日々を送っていたこともあり、大学はパスするのがやっとだったと回想する。その中で未来の自分のありたい姿を思い描いたときに、履歴書をより魅力的なものに見せて企業からの大きな信頼を勝ち得るためにはどうキャリアを積んだらいいかを考えた。そしてそれは銀行であると考え、パートタイマーとして銀行に入り、そこから将来を見据えた自身の仕事をスタートさせた。

カイさんが最初に大きなキャリアを積んだのはeBayだ。インターナショナルチームの一員として2002年からジョインし、上海でも勤務。2007年まで働いた。その後、スタートアップ企業を立ち上げ、それを軌道に乗せて売却した。

そして2008年、まだ400人ほどの規模だったフェイスブックに入社。カナダ支社の立ち上げに参画する。ただ、カナダだけで働く仕事は断り、世界中の人と関われるプロジェクトに携わることを条件に入社をしたといい、カナダでの立ち上げを手がけながら世界中の人たちと一緒に作っていくプロジェクトを担当したという。

「競争社会の中ではとても大切であるスピードを優先し、最初はフェイスブックをアメリカに広めていくことに注力しました。急成長を実現させた段階でアジアに移りたいと伝え、それが認められて上海に拠点を移して働くことになりました。当時の私は携帯電話が社会の繋がりを大きく促進していくものと確信しており、新しいプロジェクトを通してそれをアジアの国々に広げていくことで、裕福な国の利便性に近づけていけるものだと考えていたからです。

フェイスブックで結果を出したカイさんは、当時まだ従業員が12人しかいなかったインスタグラムに移る決意をし、拠点を2012年にシンガポールに移す。2014年にインスタグラムに入社し、そこから今日のライフワークにもなっている写真の世界にのめりこんでいったという。


コウゾウさんもケンさんもトモさんも彼らは“イキガイ”をもって仕事をしている

「哲学的なことになるのですが、私は自分が仕事と遊びのどちらをしているのかわからないような環境にいたかったんです。なぜなら、クリエイティブな発想は遊びの中から生まれてくることがほとんどですし、今も昔もそういうスタイルで仕事をしたほうがよい結果がついてくると信じているからです。eBayでは仕事中にヴィンテージのBMWを購入したり、フェイスブックでは仕事をしながら自分が構築したシステムによって、上海とカナダと日本とヨーロッパの新しい友達と繋がってコミュニケーションを自由に取れて、こんなに楽しいことはないなって。私は常々、今の自分は仕事をしているのか遊んでいるのかよくわからなくなるのですが、でもそれは自分の中で両者の境界が取り払われている証であり、仕事に心底夢中になれていることだと思うんです。私は遊びが大好きで、夢中になって遊ぶ中で生まれる幸せが大好きで、それをずっと仕事でもやってきて、出張でたくさんの国を旅することができました。インスタグラムで働いていたときも、写真もデザインもエディットするのも夢中になって楽しんできたからこそ、なおさらそういう気持ちが強いのだと思います。

カイさんはパッションをもって仕事をしている人たちのことがたまらなく大好きだ。特に、自分の得意なことをビジネスにしている人、それに“イキガイ”をもって仕事をしている人たちのことを非常にリスペクトしているという。


ケンさんこと、COLONY CLOTHING General Managerの佐藤賢介さん。Photo by Kai Elmer Sotto


「例えばコウゾウさんは服が大好きで、大好きなだけでなく服についてたくさんのことを学んできて、その経験を生かしてビジネスにしています。コウゾウさんやケンさん(コロニークロージング ゼネラルマネージャー 佐藤賢介さん)とはよく一緒にサーフィンをするのですが、その際に彼らがどんな服を着ているのか、どんなサーフボードを使っているのかを含めて知ることができるのもとても楽しいですし、彼らも仕事と遊びの間にある趣味のサーフィンからたくさんのインスピレーションを得て、そこから美しいものがどんどん生まれてくるわけです。そうそう、ふたりは早くコスタリカに遊びに来ないとね! たくさんのサーフボードを揃えてありますから。

ヴィンテージを含め、カイさんはラギッドなカジュアルスタイルを好む。


ちなみにカイさんは2015年にインスタグラムを離れ、フィリピンでフィルムを撮ったり、世界中をサーフトリップしながら、しばらくのあいだのんびり過ごしてきたという。そして、そのときに出逢ったビジネスパートナーと“People & Company(ピープル&カンパニー)”を設立した。

「このプロジェクトをスタートして間もなく、知り合いを通じてたくさんのクライアントを抱えている状態になりました。結構な額のチェックをもらって、でも会社の口座はまだ作れていなくて、仕事だけが先に進んでいるような状況でした。このままではまずいということで、4年前にピープル&カンパニーを設立しました。何かを人と一緒にすること、例えば一緒にケンさんと一緒に自転車に乗ったり浩三さんとサーフィンをするのもすごく楽しいことですよね。仲間たちと一緒に何かを作り上げることがとても重要だと感じていたことから、共通の興味をもっている人たちのコミュニテイを構築することを"ピープル&カンパニー”の仕事にしたのです。

コミュニティとは、同じものに興味をもっているという点で共通している人たちが集まったひとつのグループを意味するわけだが、それはいきなり作れるものではないという。

「例えばトモさん(COLONY CLOTHING Creative Directorの高田朋佳さん)のスタイリングも同じです。彼の素敵なスタイリングはパッと自然に組まれたもののように思えますが、その背景にはたくさんの努力があって、長年の経験の積み重ねから生まれたとても貴重なスタイルです。コミュニティもそれと同じように、いきなり生まれるものではありません。それを構築するには必ず何かしらが必要で、それによってコミュニティは作り上げられるのです。


トモさんこと、COLONY CLOTHING Creative Directorの高田朋佳さん。Photo by Kai Elmer Sotto


「ピープル&カンパニーで仕事をしていくなかでよく質問されたのが、どのようにしてさまざまなコミュニティが形成されていくのか、というものでした。それを答えるのが私たちの仕事であり、さまざまなタイプのコミュニティに、どのように、どこで、なぜ作られたかというのをたくさんリサーチしました。クライアントとの仕事で代表的なところでは、ナイキとランニングクラブのコミュニティを作ったり、ポルシェのドライバーズクラブやサーフライダーファンデーションのコミュニティなども構築しました」

カイさんは、自分たちが関わってきたクライアントのリーダーたちがどのような思いでどのようにコミュニティを作って成功したのかをインタビューし、『Get Together』という一冊の本を上梓した。コミュニティの構築方法が辞書のようにわかりやすく書かれているので会社や組織の研修でも使用されており、今もアマゾンのベストセラーとなっている。


Photo by Bryson Summers

Stripe Pressから発刊されている『Get Together』。「カバーも使っている色も紙も写真もすべてが美しくて、これは芸術作品だと思っています。とカイさん。


ちなみに、ライター(書き手)のコミュニティ構築の仕事を請け負ったSubstack(サブスタック)社から会社の買収提案があり、1年ほどネゴシエイトした末、つい最近ピープル&カンパニーを売却したという。

*サブスタックは有名なジャーナリストやライター、あるいは素人のライター等関係なしに、記事を読む人を探してくるというプラットフォームを作ったサンフランシスコのテクノロジーカンパニーで、わかりやすく言うと有料のニュースレター配信になるのだが、これが今アメリカでは人気が急上昇中。


訪れたそれぞれの国に大切な友人がいて、

彼らと何かを取り組む中で自分が磨かれていく


先日子供に聞かれたのを機に数えてみて初めて把握したそうだが、カイさんがこれまでに訪れたのは50カ国だという。

「ただ、私にとって訪れた国の数というのはそんなに重要ではありません。その国へ行ったときに何かを一緒に作り上げた人たちといかにして会えるか、あるいはこれから一緒に何かを取り組める人たちと出逢えるか、そこが重要だと思うんです。例えば、イタリアへは年に3~4回訪れていますが、Chez Dedeをはじめさまざまな魅力ある友人たちとコラボレーションしたりする中で、自分の中の芸術的な部分が磨き上げられてきました。一緒に何かを取り組む中で成長し、今の自分が作られてきたわけで、それは私にとってとても大切なことです

カイさんの親友でもあるローマのChez Dedeのアンドレア・フェロッラさん(左)とダリア・レイナさん(右)夫妻。Photo by Kai Elmer Sotto


浩三さんも「単に50カ国を訪れたというのではなく、訪れるそれぞれの国に必ず友人がいて、それがすべて仕事や遊びに繋がっている。しっかり深い繋がりがあって、どの国の人たちにもすごくリスペクトされている、そこがカイさんの魅力なんです」と話す。


後編に続く、、、


Photo by Kai Elmer Sotto

藤田雄宏 Yuko Fujita 

1975年、東京都生まれ。大学生のときからファッション誌の編集に携わる。2014年に創刊したTHE RAKE 日本版の副編集長兼ファッション ディレクター。THE RAKEのイタリア支局員としてナポリに駐在した経験もあり。2019年には自身の会社アフターアワーズ(https://ahours.jp)を設立。今気になっているヒト、モノ、コトを紹介しながら、シンプルな上質をテーマにしたオンラインショップを運営している。



メールマガジンを受け取る

新商品やキャンペーンなどの最新情報をお届けいたします。